Clásicos japoneses con furigana
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たきぐち
滝口
山本 周五郎
Lee 滝口 (たきぐち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 49.815 caracteres · 99 pantallas
「おりうをここまで呼んでくれ、いや、中へははいれない、いそぐんだ」
ただいま、と答えて男は戻った。
「佐助だな」と安宅は呟いた、「これからぬけ遊びにでもゆく約束があったんだろう」
板前の佐助はもう四十のとしを越している、躯こそ小柄であるが、なかなかのおとこまえであるし、庖丁を持たせたらこの城下で第一に指を折られる料理人であった。したがって彼にのぼせあがる女は幾らもいたが、彼はどんな女をも近よせず、いまだに独身をとおしている。躯のどこかに故障でもあるのだろう、などという噂を聞いたことがあった。
「そう叩くなよ、みんなに聞えるじゃねえか、か」と呟いて安宅は微笑した、「佐助には佐助の生きかたがあるんだな」
勝手口に提灯の光があらわれ、下駄の音といっしょにこっちへ来た。
「まあさまですか」とくぐり戸のところでおりうの声がした、「どうなすったんですか」
「こっちへ来てくれ」と安宅が云った。
おりうがくぐり戸から出るまでに、彼は刀を抜いていた。出て来たおりうは、提灯をかかげるなり、口をあけて「あ」と息をひき、片手でその口を押えた。雪泥にまみれ、さんばら髪で、抜き身の刀を持っている安宅の姿が、片明りの提灯の光のため、実際よりもはるかにすさまじく見えたらしい。