Clásicos japoneses con furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lee 青べか物語 (あおべかものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 160.888 caracteres · 317 pantallas
「いい舟があんだが」と老人は二百メートルも向うにあるひねこびた松ノ木にでも話しかけるような、大きな声でどなりたてた、「いい舟で値段も安いもんだが、買わねえかね」
私が答えると、老人は初めからその答えを予期していたように、なんの反応もあらわさず、吸っていたタバコを地面でもみ消し、残りを耳に挟んでから、手洟をかんだ。
「おめえ」暫く歩いたのち、老人がひとなみな声で云った、「この浦粕へなにょうしに来ただい」
私は考えてから答えた。
「ふうん」と老人は首を振り、ついで例の高ごえで喚いた、「おんだらにゃあよくわかんねえだが、職はあるだかい」
私が答えると、老人はちょっと考えた。
「つまり失業者だな」と老人は喚いた、「嫁を貰う気はねえだかい」
私は黙っていた。別れるときマッチだけ返してもらったが、急に耳の遠くなった老人は、二度も三度も私の云うことを訊き返し、そのため私は自分がひどい吝嗇漢になったような、恥ずかしさを感じた。
三度めは根戸川亭で会った。それは蒸気河岸にある洋食屋で、土間が食堂、奥に座敷があって、夜になると蒸気船(通船といわれていた)の船員や漁師たちが、しばしば盛大に酔って騒いだ。