Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lee 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 261.216 caracteres · 521 pantallas

Aozora Bunko

で、ささやかな舟世帯は、三郷の川や掘割を縫って出没し、夜は、人目の立たぬ芦の中に、浮寝の鳥と同じ夢を結んでいた。

そうして幾夜を送るうちに、弦之丞も、お綱の生い立ちや、またその性質を、充分に理解してきた。ことに、お綱と世阿弥とが、不可思議な血縁につながれていることを知ってから、彼は、もう阿波へ共に行くことを拒まなかった。

そして、わずかな間に、深い親しみをもつようになった。

けれど、それが、恋の進展とはならない。なぜならば、お綱はまだ、胸に秘めているそれをきょうまでの間に、弦之丞へ対して、言葉の端にも、ふれてみたことがないから――。

といって、お綱の思慕は、人知れずに、募りこそしてきたが、さめてはいない。

こうして、狭い小舟の中に、ひとつに暮らしていればいるほど、悩ましい恋情を理性で伏せることができない。それは、誰としても当然に起こる苦悩であろう。

恋人と共に、苫の中に隠れて、胸の奥に燃えさかっている恋を語りださずにいることは、その人の側にいるという甘いよろこびを越えて、むしろ、切ない忍苦だった。

ある夜は、木枕をならべ、薄い褥を臥しかつぐ五更に、思わず、指と指のふれあって、胸をわかすこともあろう。