Clásicos japoneses con furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lee あさひの鎧 (あさひのよろい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 239.520 caracteres · 475 pantallas
「逃げろ!」
「あぶない!」
と数人が叫んだ。
もうその次の瞬間には、乳飲み子を抱いている狂人の女と、早瀬とだけが後にのこり、ほかの者の姿が見えなくなっていた。
陽が明るくあたっていて、馬酔木の丘のような大きな叢が、その葉を銀色に光らしていた。
(まあ恐ろしい)
と早瀬は思った。
(白昼に人が殺されるなんて。……そうしてどうだろう殺した人の姿が、どこにもあたりに見えないなんて)
彼女は殺されている男の側に、首を垂れて立っていた。
顔の前に垂れている布の裾から、わずかばかり見える足もとの地面、それだけが彼女の視界であった。
彼女は非常に長い年月、布をかかげて遠くの世界や、身のまわりを見ようとはしなかった。
(わたしは誰も見たくない。わたしは何んにも見たくない。……そう、あの人を見るまでは!)
この心持ちが彼女をして布をかかげることをさせないのであった。
(良人頼春に逢うまでは、誰も見たくない、何も見たくない)
この心持ちがそうさせるのである。
彼女も杖をついていた。
その杖で行く手をさぐりながら、馬酔木の叢を巡りながら、当てなしにソロソロと歩いて行った。
近畿地方はいうまでもなく、山陰、山陽の方面まで、数年の間に良人を尋ねて、彼女は流浪し歩き廻った。