Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lee 五瓣の椿 (ごべんのつばき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.721 caracteres · 296 pantallas

Aozora Bunko

か、もっと悪いことになっていたかもしれないんだ」

「そんな話やめて、お父つぁん」とおしのが遮った、「病気に障ったらどうするの、あたしもう聞くのはいやよ」

「もうすぐだ、もう少しだから聞いておくれ」と喜兵衛は云った、「いいか、私はおまえ一人を頼りに生きて来た、婿の縁談をきめなかったのも、二人でこの家を出るつもりだったし、べつに商売を始めたら、そのとき縁組をする手筈がつけてあったんだ」

金はその目的で溜めたものだ。入婿でも「むさし屋」の主人だから、この家の財産はおれのものだと云えるだろう。しかし自分は自分の金を持ちたかった。それで油屋の店を開き、この店と油屋からあがる利益のうち、自分の取前をべつにして溜めたのだ。

「千両にはならなかったが、それでも商売にとりつく元手にはなるだろう」と喜兵衛は続けた、「もしも、――私にもしものことがあったら、あの金を持って徳次郎と」

「いや、よして」おしのは起き直った、「そんな話はいや、お父つぁん」

「はっきり云おう、おしの」と喜兵衛が云った、「私はもうだめなんだ」

おしのはまた半纏をひっかけ、父の枕許へいって坐った。総身がふるえ、舌が硬ばって、すぐにはなにも云えなかった。