Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lee 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 85.965 caracteres · 169 pantallas
芒の中
私の父は、向島の水漬いた家からときどき私達に会いに来た。一時は軒下までも来た水ももうすっかり去ったが、そのあとの目もあてられない程にひどくなっていることを話し、何処かにしばらく一時借住いしなけれはならない家の相談などを母たちとし合ったりしていた。
幼い私は、父が来てそんな話をしていく度毎に、そんなわが家のことなどは思わず、唯、ながいこと可哀そうに水につかっていた無花果の木のことだの、どこかへ流れ去っただろう玉網のことだの、それから其処から引越してしまえば、もう会えなくなってしまうだろうお竜ちゃんのことだの、それから少し、たかちゃんのことだのを、切なく思い出していた。
芒の中
「ほら、見てごらん」と父はその家の壁のなかほどについている水の痕を私達に示しながら、「ここいらはこの辺までしか水が来なかったのだよ。前の家の方はお父さんの身丈も立たない位だったからね。……」
その私達の新しく引越していった家は、或る華族の大きな屋敷の裏になっていた。おなじ向島のうちだったが、こっちはずっと土地が高まっていたので、それほど水害の禍いも受けずにすんだらしかった。前の家ほど庭はなかったが、町内は品のいい、しもた家ばかりだったから、ずっと物静かだった。