Clásicos japoneses con furigana
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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
Lee 文藝別冊[総特集]岡本綺堂 (いけぶくろのかい) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 72.671 caracteres · 149 pantallas
(息をはずませて。)お前が恋しいばっかりだ。
(お冬はおどろいたように顔をあげる。)
和吉 わたしは今まで一度も口に出したことはなかったが、とうからおまえに惚れていたのだ。どうしてもおまえと夫婦にならずには置かないと自分だけでは思いつめていたのだ。そのうちにお前は若旦那と……。そうして、近いうちに表向きにお嫁になると……。まあ、わたしの心持はどんなだったろう。お冬どん、察しておくれ。それでもわたしはお前を憎いとは思わない、今でもちっとも憎いとは思っていない。(いよいよ息をはずませる。)唯むやみに若旦那が憎くってならなかった。いくら御主人でももう堪忍が出来ないような気になって……。わたしは気が違ったのかも知れない。今度の初午の芝居を丁度幸いに、日蔭町から出来合いの刀を買って来て、幕のあく間際にそっと掏りかえて置くと、それがうまく行って……。それでも若旦那の勘平がほんとうに腹を切って、血だらけになって楽屋へかつぎ込まれた時には、わたしも総身に冷水を浴びせられたようにぞっとした。それから若旦那が息をひき取るまで二日二晩のあいだ、わたしはどんなに怖い思いをしたろう。