Clásicos japoneses con furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lee 新潮記 (しんちょうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 155.541 caracteres · 305 pantallas
そうも思うが、しかしどんな暑さのなかでも衿ひとつ寛げず、鬢の毛ひと筋みだしたことのない、凛とした身がまえをみると、まるで違う世界の人を見るようでとっつきばがない感じだった。……今もそうである。あの夜客から貰ったまま納ってあった笛を、二人っきりのつれづれに、ふと取りだしてみせると、藤尾は珍しくまあと眼をみはった。
――結構なお品でございますこと。
――さる客から頂いたのですよ。
――拝見させて下さいまし。
かつてみせたことのない執心をあからさまにして、笛を手に取ると飽かずうちかえして眺めていた。
――あなたお嗜みなさるの。
――嗜むというほどではございませんけれど。
そう云う言葉の裏に、吹いてみたいという気持がいじらしいほども表われている。それで一曲しょもうすると、少し羞みはしたが、いそいそと歌口をしめすのだった。心得があったのである。もとの主にまさっているとはいえぬまでも、梅八の耳には甲乙をわけがたいものだった。――このひとが。とおどろいたし、ますます底の知れない感じにつき当らせられた。むろん、今はそんなことを思ってはいない。梅八の全身は笛の音に溶けこみ、われを忘れるほども恍惚としているのだった。