Clásicos japoneses con furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lee 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 138.172 caracteres · 277 pantallas
朱絃舎浜子
一
木橋の相生橋に潮がさしてくると、座敷ごと浮きあがって見えて、この家だけが、新佃島全体ででもあるような感じに、庭の芝草までが青んで生々してくる、大川口の水ぎわに近い家の初夏だった。
「ここが好いぞ、いや、敷ものはいらん、いらん。」
広い室内の隅の方へ、背後に三角の空を残して、ドカリと、傍床の前に安坐を組んだのは、箏の、京極流を創造した鈴木鼓村だった。
「此処は反響が好い、素晴しく好いね。」
も一度立って、廻り椽の障子も、次の間への襖も、丸窓の障子もみんな明けて来た。
「ええね、ええね、なんか嬉しい気がするぞ、今日は良う弾けるかも知れんなあ。あれ、あんなに潮が高くなった。わしゃ、厳島に行ってること思出しています。ホ!」
また大きな体を、椽のさきまで運んでいった。
「ほう、ほう、見る間に、中洲の葭がかくれた。あれ、庭の池で小禽か鳴いているわい。」
「翡翠でしょう。」
わたしは早く「橘媛」が聴きたかった。
「まあ、すぐじゃ、すぐじゃ。」
鼓村氏は閉口した時にする、頭の尖の方より、頸の方が太いのを縮めて、それが、わざと押込みでもするかのように、広い額に手をあてながら座についた。