Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

Lee 江戸前の釣り (えどまえのつり) de 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 106.910 caracteres · 214 pantallas

Aozora Bunko

と、志賀高原・熊の湯の主人、あだ名を「熊さん」から便りをもらった。

ぼくが昭和二十九年、千葉県佐倉鹿島川の鉄橋で汽車にはねとばされて、赤坂の外科前田病院へ入院していると、信州からわざわざカモシカの肉を持って見舞いにきてくれた。はなし家にカモシカの肉、なんだか妙な取り合わせだが、はなし家にシカの肉を食わせると早く全快するだろう、というのが熊さんの考えらしい。

それでも、涙と水ばなを流して、私が寝ているベッドのわきで、持参の焼酎を飲んでいい心持ちに酔っぱらい、まあ一日でも長く入院しているほうがいいよ、といって帰って行った。

退院して家に帰っていると、なんの前ぶれもなく、それこそ突然表があいて、あいさつもなくはいってきたのが、髭の中から顔を出したような熊さんである。

「お前さんの好きなリンドウの花が咲いたから、持って来たよ」と、リュックの中のみかん箱から、ドロつきのまま取り出した根のついたりっぱなリンドウの花。なつかしい山のかおりがプーンとする。

そのとき、ぼくは山の香と一緒に、何か忘れていたものを思い出そうと、遠方を見つめていた――。

山の香、山の香、山の宮さま……。