Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ぬまふじん

沼夫人

泉 鏡花

Lee 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 39.541 caracteres · 78 pantallas

Aozora Bunko

――希代なのは、その隙間形に、怪しい顔が、細くもなれば、長くもなり、菱形にも円くもなる。夕顔に目鼻が着いたり、摺木に足が生えたり、破障子が口を開けたり、時ならぬ月が出でなどするが、例えば雪の一片ごとに不思議の形があるようなもので、いずれも睡眠に世を隔つ、夜の形の断片らしい。

すると、今見た女の顔は……何に憑いて露れたろう。

「何だか美しかった。」

と思出して、今度は悚然とした。

「そして、奥さんだ?……奥さんとはどこの奥さんだ。」

確に此家の細君の顔ではない、あれでなし、それでもなし、目がぱっちりして、色が白く、前髪がふっくりと、鼻筋通り……

と胸の裡で繰返して、その目と、髪と、色艶と、一つ一つ絡まり掛けると……覚がある!

トンと寝台に音を立てて、小松原は真暗な中に、むっくと起きた。

「馬鹿な。」

と思わず呟いた。

「何、そんな奴があるものか。」

いや、いや、もしその人だとすれば――三年以前に別れてから、片時も想わずにはおらぬ、寝た間も忘れはしないのであるから、幻も、その俤は当然で、かえって不審くも凄くもない筈。

「開けて下さい、」

と云った……それそれ、扉を開けるつもりで、目を覚したに違いはない。