Clásicos japoneses con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lee 火の扉 (ひのとびら) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 129.467 caracteres · 257 pantallas
「えゝ、それだけの理由よ。まさか景色がいゝからいるつてことないわ」
「そりや、そうだろうけれども……」
と、彼は、苦つぽく言い、モトムが岩の間でなにか探している、その方へ近づいて行つた。
彼女は、すると、もう後悔に似た気持がわいて来て、なにか、うめあわせになるような言葉をかけてやりたかつた。
と、その時、モトムが、とつぜん、
「お母さん、この上に炭焼小屋があるんだつて……ボク、行つてみたいや」
「あら、だつて、もうそんな時間ないわ」
「うゝん、すぐそこだつて。炭焼つて見たことないんだもの」
「市ノ瀬さん、ほんとにすぐそこなの?」
と、彼女は、わざと、やさしく念をおす。
「そのたきのむこうですよ。煙がみえてます」
なるほど、そう言えば木立ちのすき間から、ひと筋の白い煙が立ちのぼつていた。
彼女は、黙つて歩きだした。
モトムは、市ノ瀬牧人の手を引つぱつて、走りだす。
やがて、すこし上の方のつり橋を渡り、赤松の林をぬけると、べつの谷がひらけ、その谷への降り口に、炭焼小屋があつた。
市ノ瀬牧人は、小屋のそばで煙草をすつている男に、なれ/\しく話しかける。さつき昼食をした家のむすこだということがわかる。