Clásicos japoneses con furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lee 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 86.705 caracteres · 173 pantallas
雨の音と、咆哮する風と――母家のほうはすっかり寝しずまったらしく、男衆が一人、そっと土間を片づけにかかっているだけ。すると、その時である――。
「江戸下谷、練塀小路、法外流剣法道場主、弓削法外の贈り物じゃ! ありがたく取っておけ!」
梯子段の上に大声がして、一同は振り仰ぐ。
声がするのみ――声の主の姿や顔は見えないが、広間の連中、何事? といっせいに見上げた。その面上へ!
ぱら、ぱらっ! と赤い、小さな物が降って来たので!
皿へ落ちる。起ちかけた膝もとに転がる。髷に引っかかる。頬を打って飛ぶ――十本ばかりの、細い金魚のようなものだ。
「なんだ――!」
と拾い上げて見る。指である。いま斬り離されたばかりの血に染れた手の指が十本!
「うぬ!」
酔いもなにも一時に醒めて押っ取り刀、わや、わや、わやと崩れ立った中之郷東馬、山路主計、ほか六、七人の異形の士、なかに、北伝八郎という素っ裸のさむらい、さらしの六尺に一本ぶっこんで、
「与七郎、やられたのかっ! おのれ――!」
まっ先に階段を駈け上ろうとする――と! その頭の上へ落ちて来たのだ。川島与七郎が。血だらけの袖で、死人のように蒼褪めた色で、一段一だんと、弾みを打って。