Clásicos japoneses con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas
風が、冷たい。
「今、何時ごろかな?」
誰かが、そういったけれども、時計を持っている者はなかった。
「五時じゃ」
と、断定的に、いう者があった。
「どうして、わかる?」
「安養寺の鐘が鳴りよる」
そういわれて、耳をすますと、未明の空気の奥底に、余韻をながく引いた鐘の音が、かすかに、ひびいていた。若松にある安養寺は、古い由緒のある浄土宗の寺である。朝の五時には、かならず、時鐘を撞く。鐘楼は街を一望に見下す高台の突端にあるので、その音は、ひろく、遠く、伝わる。それでも、港外になる燈台沖までは聞えにくいのだが、西風のせいであろう。
「五時か?」と、舳に腰をおろしていた金五郎は、ちょっと、不審そうに、「パナマ丸は遅いなあ。四時過ぎには、入港する予定ちゅうことじゃったが……」
「ボーシン、すこし遅れた方が、ええよ。明かるうなってからの方が、危険がないけ」
「それも、そうじゃが、暗い方が、こっちの作戦が、敵方に知られんですむ」
「角助の野郎、人非人じゃなあ」
「繋船が、三番浮標じゃけ、きっと、あいつ、ブイのところに、伝馬を漕ぎだして待っとるよ。それで、こっちの鼻を明かそうと考えとる。