Clásicos japoneses con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas
金五郎夫婦は、額をつきあわせて、青息吐息である。
「どうしたもんかなあ……?」
「困ったわねえ」
港では、一つの仕事の権利を取り、組の名札を掛けることは、金的を射とめたと同じ栄誉となっている。このために、日夜、野心家の間に、血なまぐさい争闘が展開されているほどだ。
ところが、金五郎の場合は、野心もなければ、欲望もなく、まして、運動をしたわけでもなかったのに、予想もしない、一つの組としての権利が、天くだって来たのであった。普通の者ならば、飛びあがって、この棚から落ちて来た巨大なボタ餅を、大あわてで掴むところだ。しかし、金五郎にとっては、この御馳走が、すこぶる苦痛なのであった。
夫婦の寝物語から、壮大な青春の夢は、まだ、消えていない。
「おれは、ゆくゆくは、支那大陸に渡って、一旗あげる。幸い、日露戦争の勝利で、存分に活躍出来るようにもなったし……」
「あたしは、やっぱり、ブラジルよ。大農場の経営、すてきだわ」
二人が、仲仕をしながら、力をあわせて働いたのも、その青雲の志あればこそといってよかった。
ところが、複雑で微妙な人間の実生活は、二人を、ぐいぐいと、思いもかけぬ方向へ導いて行く。