Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas

Aozora Bunko

……ちゅうて、大層、口惜しがっとったちゅうわい。それでも、あの男のことじゃけ、まだ、どんな卑怯な策略を、考えとらんとも限らん」

「親方」

マンは、急に、立ち止まった。

「なんじゃい?」

「この道です」

「この道が、どげしたな?」

「この道ですわ。うちの人と二人で、はじめて、永田の親方を頼って来たとき、この道を歩きました。彦島を追いだされて、金はないし、腹は減るし、……あたしも、うちの人も、まるきり、乞食の引っ越しみたよな恰好で、この道を、とぼとぼ、とぼとぼ……」

「古い話じゃのう。あれから、何年になるか知らん?」

「三十年近くになります」

「それくらいにはなろうなあ、おれが、こげな、よぼよぼ爺になっちょるけ」

「あたしも、こんなお婆さんになってしもうて……」

二人は顔見あわせて笑ったが、マンの眼には、うっすらと光るものがあった。

すっかり開けて、様子は変ってしまっているけれども、道筋と、それを挟む崖や、丘には、なお昔の面影が残っていた。踊るような恰好の一本松や、竹藪へ登る壊れた石段、「猿田彦大神」の祠などには、はっきりした記憶があった。前途暗澹とした気持で、金五郎と二人、力なく腰をおろした路傍の石も、そのままある。