Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
引き掛けた法衣のようにふわついた下から黒足袋が見える。足袋だけは新らしい。嗅げば紺の匂がしそうである。古い頭に新らしい足の欽吾は、世を逆様に歩いて、ふらりと椽側へ出た。
拭き込んだ細かい柾目の板が、雲斎底の影を写すほどに、軽く足音を受けた時に、藤尾の背中に背負った黒い髪はさらりと動いた。途端に椽に落ちた紺足袋が女の眼に這入る。足袋の主は見なくても知れている。
紺足袋は静かに歩いて来た。
「藤尾」
声は後でする。雨戸の溝をすっくと仕切った栂の柱を背に、欽吾は留ったらしい。藤尾は黙っている。
「また夢か」と欽吾は立ったまま、癖のない洗髪を見下した。
「何です」と云いなり女は、顔を向け直した。赤棟蛇の首を擡げた時のようである。黒い髪に陽炎を砕く。
男は、眼さえ動かさない。蒼い顔で見下している。向き直った女の額をじっと見下している。
「昨夕は面白かったかい」
女は答える前に熱い団子をぐいと嚥み下した。
「ええ」と極めて冷淡な挨拶をする。
「それは好かった」と落ちつき払って云う。
女は急いて来る。勝気な女は受太刀だなと気がつけば、すぐ急いて来る。相手が落ちついていればなお急いて来る。