Clásicos japoneses con furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lee 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.271 caracteres · 263 pantallas
」
対手は矢はり黙っているので、お杉は笑いながら其傍へ歩み寄った。
「判らない人だねえ。何でも可いから妾の云うことを肯いて、素直にここの人にお成りよ。お前が惚れている市郎も、今にここへ連れて来て上げるから……。可いだろう。」
「若旦那がここへ……。」
「ああ、妾が必然連れて来て見せるから、温順くして待ってお在。え、それでも忌かえ。ねえ、お葉さん、確乎返事をお為よ。」
お杉は窪んだ眼を異様に輝かして、対手の顔を穴の明くほど凝と見詰めると、お葉は少しく茫となって来た。
「え、判ったかえ。」
低声に力を籠めて云うと、お葉は小児のように首肯いた。彼女は漸次に酔って来たように感じた。
「可いかえ。はいと返事をお為。」
「はい。」
「重太郎のお嫁になるかい。」
「はい。」
お葉は夢心地で答えた。
「可、可。さあ、妾と一所にお出で。」
進んで其手を把ると、お葉は拒みもせずにふらふらと起ち上った。お杉は此の捕虜を窟の暗い奥へ連れ込んで了った。焚火に映る重太郎の顔は、火よりも熱して赤く見えた。
やがて窟の奥からお杉の声で、
「重太郎、火を消してお了いよ。」
重太郎は云わるるままに焚火を踏み消すと、四辺は俄に暗くなった。