Clásicos japoneses con furigana
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こころ
こころ
Lee こころ de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 160.915 caracteres · 322 pantallas
二十六
私の眼は好事家が骨董でも掘り出す時のように背表紙の金文字をあさった。
梅が咲くにつけて寒い風は段々向を南へ更えて行った。それが一仕切経つと、桜の噂がちらほら私の耳に聞こえ出した。それでも私は馬車馬のように正面ばかり見て、論文に鞭うたれた。私はついに四月の下旬が来て、やっと予定通りのものを書き上げるまで、先生の敷居を跨がなかった。
二十六
私の自由になったのは、八重桜の散った枝にいつしか青い葉が霞むように伸び始める初夏の季節であった。私は籠を抜け出した小鳥の心をもって、広い天地を一目に見渡しながら、自由に羽搏きをした。私はすぐ先生の家へ行った。枳殻の垣が黒ずんだ枝の上に、萌るような芽を吹いていたり、柘榴の枯れた幹から、つやつやしい茶褐色の葉が、柔らかそうに日光を映していたりするのが、道々私の眼を引き付けた。私は生れて初めてそんなものを見るような珍しさを覚えた。
先生は嬉しそうな私の顔を見て、「もう論文は片付いたんですか、結構ですね」といった。私は「お蔭でようやく済みました。もう何にもする事はありません」といった。
実際その時の私は、自分のなすべきすべての仕事がすでに結了して、これから先は威張って遊んでいても構わないような晴やかな心持でいた。