Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lee 五瓣の椿 (ごべんのつばき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.721 caracteres · 296 pantallas

Aozora Bunko

得石は「なんだつまらない」という顔をし、帯をしめると、足もとにある紙包みを取って中をしらべてから袂へ入れた。

「九年の余もこき使われて、身も心もこんなにすりへらし、老いさらばえてから捨てられるなんて、あたしのことをよっぽどのばかだと思っているんだろう」とおくには続けた、「そうだよ、あたしゃあばかだよ、おまえさんのようなきたならしいことをする医者の側にいて、いつか仕合せになれると思うなんて底ぬけのばかさ」

「人間の悲しいのは」と彼は冷笑するように云った、「あとになって自分がばかなことをしたと気づくことだ、けものはそんなことに気づきゃあしないがね」

「あたしがけもの同様だったと云うのかい」

得石は振り向いて妻を見た。口髭のある端麗な、どっちかというと女性的な彼の顔に、酷薄な、人間らしくない表情があらわれた。おくには反射的に片方の肱をあげ、それで自分を庇おうとした。これまで彼の顔にそういう表情があらわれると、必ず平手打ちか拳がとんできたからである。けれども得石はいま殴らなかった。氷のような視線で、妻の全身を眺めまわし、そして静かに羽折を着た。

「放り出されたくなかったら、いまのまま温和しくしていろ」