Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

Lee 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 38.941 caracteres · 79 pantallas

Aozora Bunko

お半の方は首垂れた。その足下に懐剣があった。お半の方はくず折れた。宗春には訳が解らなかった。お半の方と懐剣とを、茫然として見比べた。

長い両袖を床へ重ね、お半の方は額を宛てた。肩が細かく刻まれるのは、忍び泣いている証拠であった。

お半の方は顔を上げた。懐剣を取って差し出した。

「お手討ちになされて下さいまし」

お半の方は咽び乍ら云った。

「何故な?」

と宗春は不思議そうに訊いた。

「その懐剣は何うしたのだ?」

「はい、是でお殿様を……」

「ははあ俺を刺そうとしたのか?」

「……その代り妾もお後を追い……」

「うむ、心中というやつだな」

「……お弑し致さねばなりません。……お弑しすることは出来ません。……恨みあるお方! 恋しいお方! ……二道煩悩……迷った妾! ……お手討ちなされて下さいまし!」

「一体お前は何者だ?」

「妾の父はお殿様に……」

「可い可い」

と宗春は手を振った。

「云うな云うな、俺も聞かない。……

……父の仇、不倶戴天、こういう義理は小五月蠅い。……訊きたいことが一つある。お前は将来も俺を狙うか?」

お半の方は黙っていた。

「殺せるものなら殺すがいい。殺されてやっても惜しくはない。