Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lee 季節のない街 (きせつのないまち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 201.379 caracteres · 394 pantallas

Aozora Bunko

親おもい

とらはどうしたろうか。俗に猫は家に付くといわれ、飼い主が移転しても、家に付いてはなれないそうであるが、とらはそんな俗説には関心がなかったのだろう、家のまわりで、幾たびかなくのを聞いた人はあるが、その後はさっぱりと姿をみせなくなった。

「きっと半助さんのあとを追っていったんだよ」と近所のかみさんの一人が云った、「三日飼われると死ぬまで恩を忘れないっていうからね」

「それは犬のことさ」とべつのかみさんが云った、「猫なんか恩のおの字も知りゃあしないよ、猫にできるのは化けるくらいのものさね」

半助はついに帰って来なかった。

親おもい

「そっちの番だよ」とたんば老人が云った、「私はこの桂はねだ」

岡田辰弥は重たい石でも持ちあげるように眼をあげて、一枚板の古い将棋盤の上を見た。いつも顔色こそよくないが、切れ味のいい刃物を思わせるような、きらっとした活気のひらめいている顔が、いまはむくんだように力を失い、たるんでいるようにみえた。

――またなにか困ったことがもちあがったんだな。

たんば老人はそう思ったが、けぶりにもみせず、半インチほどになったタバコのすい殻を、キセルの火皿に詰め、それを手焙りの火ですいつけた。