Clásicos japoneses con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lee 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 350.912 caracteres · 702 pantallas
すると、どこかで、
「くそばば」
と、いった者がある。
足を止めて、
「なんじゃと」
ねめ廻して、そこらを探すと、樹陰に見えた伊織の顔が、ヒーンと、馬の真似して歯を剥いて見せながら、
「これでも喰らえ」
と、固い物を抛りつけた。
「ア痛」
ばばは、胸を抑えながら、地に落ちた物を見た。そこらに幾つも落ちている柘榴の実の一つが砕けていた。
「こいつ」
ばばは、べつに実を一つ拾って、手をふり上げた。伊織は、悪たれをたたきながら逃げこんだ。厩のある角まで、ばばは追いかけて行ったが、そこから横をのぞいたとたんに、今度はやわらかい物が顔へいっぱいに打つかってつぶれた。
馬の糞だった。ばばは、ベッベッと唾をした。顔についているものを指で掻き落すと、ぼろぼろと涙が共にながれて来た。かかる憂き目にあうというのも、旅の空なればこそ、わが子のためなればこそ。――そう思うと老いの身をふるわせて口惜しく思うのであった。
「…………」
伊織は、遠くに逃げて、物陰から顔を出していた。悄然とばばが泣いている姿を見ると、彼も急にしょんぼりして、大きな罪を犯したように恐くなった。
ばばの前へ行って、謝りたくなった。