Clásicos japoneses con furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Lee 新・水滸伝 (しん・すいこでん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 684.899 caracteres · 1374 pantallas
「……おっ母あ」
彼の声は、土間の一隅に糸車をすえて、他念なく、糸を紡いでいた老母の耳を怪しませた。
老母は、まったくの盲である。
だから日が暮れたのも知らず、糸笊や糸車の手元に、灯を必要ともしなかった。
「おっ母あ。どこかね、おっ母あ」
「おや。……誰かい?」
「おらだよ」
「そ、そのお声は」
「李逵だわな! 鉄牛がいま、帰えって来たんだわな!」
「ひぇッ、せがれだか」
「あ、あぶねえ」
あわてて李逵は抱きとめた。小ッこい老母のからだは、もう彼の体にしがみついて、ただぶるぶるふるえているのである。
「わ、われはまあ、何年も何年も、いったい、どこに何していただよ。ええもう、生きたやら死んだやらさえ、日頃には……」
「ま。……ま、おっ母あ、おちついてくれ。ほんとにすまねえ、勘弁してくらっせ。だがの、こんどは、一生一ぺん、おっ母あにも、なんとか、安心して貰おうと思って、わざわざ、遠くから迎えに来たんだ」
「ほ。遠くから、わたしを連れに? ……それやいったい、どこぞいな?」
「梁山泊といって。いや、違ッた、そ、その梁山泊のある山東という地方へ、じつアこんど、おらあ役人になって行くわけさ」