Clásicos japoneses con furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lee 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 337.181 caracteres · 676 pantallas
叛骨
――どこの子か。
内証の奥で、嬰児が泣く。
虫気を起しているとみえ、よほど遠くではあるが、耳についた。――内蔵助は、酔いつぶれて寝た儘の暗い畳のうえに、いつか、凝と、眼をあいて、天井を見ていた。
(母乳が出ぬのか)
そう思う。
色街の深夜は、妙に陰気なものだった。――歓楽の後の何ともいえない哀寂が、しいんと、墓場のように沈んでいる。
――地の底から、啾々と泣く声に似ている。どこの嬰児だろう? 内蔵助はすっかり醒めていた。
但馬の実家へ帰した妻のお陸――今年生れの大三郎――。又、るり女は何うしているか? 吉千代は無事だろうか。
(……彼妻も、母乳が)
と、思うともなく思いやられる。
――誰か、その時、密やかに、襖をひいた者がある、内蔵助は、そのまま眼を閉じていた。衣ずれもせず、人の気配が寄ってきた。そっと、肩に手をおく。
『もし……。うき様……うき様……。もうお眼ざめなされませ、浮橋さまのお部屋へ』
仲居という事を彼は知っていたが、うーむと、うめいて寝返りをわざと打った。窓の女竹がさやさやと風でもあるように戦いだのも感じていた。仲居の手は、自分を起すとみせ、実は、袂を探っているのである。