Clásicos japoneses con furigana
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つきかげ
月かげ
豊島 与志雄
Lee 月かげ (つきかげ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 6867 caracteres · 14 pantallas
四月から五月へかけた若葉の頃、穏かな高気圧の日々、南西の微風がそよそよと吹き、日の光が冴え冴えとして、着物を重ねても汗ばむほどでなく、肌を出しても鳥肌立つほどでなく、云わば、体温と気温との温差が適度に保たれる、心地よい暖気になると、私は云い知れぬ快さを、身内にも周囲にも感じて、晴れやかな気分に包まれてしまった。思うさま背伸をしてみても、腕をまくってみても、足袋をぬいでみても、頭髪を風に吹かしてみても、爽快な感触が至る所にあった。着物も家具も空気も空も日の光も、一寸ひやりとする温かさで、肌にしみじみと触れてきた。そして何処にも、眼の向く所には、こんもりとした新緑の二枝三枝が見えていて、葉の一つ一つが輝かしい光を反射し、仄かな香をも漂わしていた。この愉快な一日をどうして過したらよかろうかと、そういった風な気持に私はなって、如何にせっぱつまった仕事が控えていても、それをみな明日へ明日へと追いやって、何処へともなく出歩くのだった。凡ての人がなつかしく、凡てのものが珍しくて、私の心はにこにこ微笑んでいた。
終日遊んだり歩いたりしても、なお倦き疲れることがなかった。