Clásicos japoneses con furigana
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げつめい
月明
豊島 与志雄
Lee 月明 (げつめい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 16.772 caracteres · 34 pantallas
少し気味悪くなってきたので、漁夫達は力のあらん限り漕ぎまくって、漸う岸まで戻ってきて、ほっと後ろを振り返ると、今まで同じ速さでついてきていたその船が、何処へ行ったか消え失せてしまってるんです。その時はほんとにぞーっとしたと云っていました。」
まあーと云ったように、姉は眼をきょとんとさし口を開いて、彼の顔を見守った。
「そんなこともありそうですわ。」と俊子は静かな声で云う、「海には一つの霊がないとしても、何かのいろんな霊が籠ってるに違いないわ。」
波の音がその声を、上からどーっと押っ被せてしまった。が、その波音の中にまた何か変な気配がした。上を仰いで見ると、一羽の黒い鳥が低く飛び過ぎた。
彼はぎょっとした。思わず俊子の方へ身を寄せると、俊子は眼と口元とで軽く微笑んでみせた。その顔が怪しく美しかった。彼は胸の中でぎくりとした。度を失ってまごついてると、俊子は瞬間に眼を外らして、腕につかまってきた姉の方へ云っていた。
「臆病な方ね。鳥じゃないの。」
「だって、私何かと思ったわ。生きたものならちっとも恐かないけれど、怪しい変なものは大嫌い。」
「私はまた、お化ならちっとも恐かないけれど、人間が一番恐いわ、何をされるか分らないから。