Clásicos japoneses con furigana
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りんご
林檎
豊島 与志雄
Lee 林檎 (りんご) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 11.752 caracteres · 24 pantallas
四月初旬の夜のことだった。汽車は北上川に沿って走っていた。その動揺と響きとに身を任せて、うとうとと居眠っていた私は、窓際にもたせた枕の空気の減ったせいか、妙に不安定な夢心地で、ぼんやりと薄眼を開いた。が、身を動かすのも大儀で、そのままじっとしていると、すぐ前の所に、淡い電燈の光を受けて、にこにこ微笑んでる男の顔があった。おや、と思ってよく見ると、仙台で私が乗車した時から、其処に坐っていた男だった。たしかもう十二時も過ぎたこの夜更に、乗客は大抵うつらうつらとしてる中で、一人眠そうな顔もせず、腰掛の上に真直に坐って、にこにこ笑ってるのである。
変な奴だな、と私は思ったが、それと同時に、初めからそういう感じを受けたのを思い出した。仙台で私が乗込んできた時、前の腰掛には、その男と五十年配の男とが並んで坐っていたので、窓から荷物を取入れる時に私は、窓寄りのその男に向って、御免下さい、と挨拶をしたのだった。それが聞えたのか聞えないのか、男は棒のように真直に坐ったまま、返辞はおろか身動き一つしなかった。私は座席をととのえ、雑誌を少し続け読み、それからうとうとと眠ったのであるが、その間彼はじっと、棒のように坐ってたようだった。