Clásicos japoneses con furigana
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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
Lee 林芙美子随筆集 (いなかがえり) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 58.157 caracteres · 118 pantallas
認識への道の下にある、心を型どった池の中にはおたま杓子がうようよいて、空缶にいっぱいすくって帰って来たものだ。
支那に遊んだ翌年の秋、私は一冊の本を出して欧洲へ一ヶ年の旅程で旅立った。巴里へいっても倫敦へいっても、よく、ばつけの白い堰や、哲学堂のおばけの夢なんぞを見て困った。もう帰れないのではないかと思った欧洲から、去年の夏、また上落合の榎のある家に帰って来た。
庭にはダリアや、錯甲や、カカリアなどの盛りで、榎はよく繁って深い影をつくっていた。その頃、尾崎さんもケンザイで鳥取から上京して来ていた。相変らず草原の見える二階部屋で、私が欧洲へ旅立って行く時のままな部屋の構図で、机は机、鏡台は鏡台と云う風に、ちっとも位置をかえないで畳があかくやけついていた。障子にぴっちりつけて机があった。その机の上には障子に風呂敷が鋲で止めてあった。この動かない構図の中で、尾崎さんはコツコツ小説を書いていたのに、私はうつり気なのか支那へ行ってみたり、欧洲へ行ってみたり、そして部屋の模様をかえてみたりした。十畳位の部屋に小さい机が一ツに硯箱のいいのでもあったらと云うのが理想なのだが、三輪の家は物置きのようにせまくて、ちょっと油断しているとすぐ散らかって困った。