Clásicos japoneses con furigana
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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
Lee 林芙美子随筆集 (いなかがえり) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 58.157 caracteres · 118 pantallas
私は田端の自笑軒の前を通って、石材屋の前のおどけた狸のおきものを眺めたり、お諏訪様の横のレンガ坂を当もなく登ってみたりした。小学生が沢山降りて来る。みんな顔色が悪い。風が冷たいせいかも知れない。みんなあおぐろい顔色をしていた。
谷中の墓地近くになっても貸家はみつかりそうにもなかった。いたずらに歩くばかりで、歩きながら、考えることは情ないことばかりだった。朝倉塾の前へ来ると、建築の物々しいのに私はびっくりしてしまった。屋根の上にブロンズが置いてある。田舎のひとのよろこびそうな建物だなと思った。石材屋と、最中屋との間を抜けて谷中の墓地へ這入るとさすがに清々とした。寺と云う寺の庭には山茶花の花がさかりだし、並木の木もいい色に秋色をなしていた。広い通りへ出て川上音次郎の銅像の処で少時休んだ。女の子供が二人、私のそばで蜜柑を喰べていた。それを見ていると、私の舌の上にも酸っぱい汁がたまりそうであった。川上音次郎の銅像はなかなか若い。見ていて、このひとの芝居は私は一度も知らないのだなと、まるで、自分が子供のように若く思えたりする。銅像の裏には共同便所があるので、色々な人たちが出たり這入ったりしていた。