Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
Lee 林芙美子随筆集 (いなかがえり) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 58.157 caracteres · 118 pantallas
向島のドックには色々な船が修理に這入っていた。鉄板を叩く音が、こだまして響いて来る。なごやかに景色に融けた気持ちであった。ひそかな音をたてて石崖に当る波の音もなつかしかった。てすりに凭れて海を見ていると、十年もの歳月が一瞬のように思えて仕方がない。この宿屋に泊るのに、金は大丈夫だったかしらと、何の錯覚からかそんな事まで考えたりした。
昔、わたしはこの町で随分貧しい暮らしをしていた。さまざまなものが生々と浮んで来る。その当時の苦痛がかえってはっきり心に写って来る。休止状態にあったみじめな生活が、海の上に浮んで来る。わたしは昔のおもい出で、窒息しそうに愉しかった。その愉しさは狂人みたいだった。Y襯衣の胸の釦をみんなはずして、大きな息をしたいほどな狂人じみた悲しさだった。明日は因の島へ行ってみようと思ったりした。
風呂から上ると、わたしは廊下を通る女中を呼びとめて、上等の蒲団へ寝かせて下さいと頼んだ。なりあがりものの素質をまるだしにしてしまって、だが、その気持ちは子供のような歓びなのだ。わたしは海ばかり見ていた。ちぬご、かわはぎ、かながしら、色々な魚が宙に浮んで来る。