Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
私は男と並んで草原に身をなげ出してすわった。
「グラマンがよくやって来るね」
「今日は、まだ初めてですよ」
男は私の顔をちらと見て言った。
「兵曹は応召ですか」
「補充兵だよ」
「下士候補の?」
「そう。受けたくなかったけれど」
「兵隊でいるよりはいいでしょう」
男はそう言い、神経質な笑い声をたてた。
「蝉が、多いね」
「夜でも、うっかりすると鳴いているのですよ」
「つくつく法師は、まだかね」
「まだですよ。あれは八月十日すぎ」
男の表情に、いらいらした影が浮んで消えた、と思った。
「つくつく法師は、いやな蝉ですね」
男はそう言い、一寸間をおいて、
「私はね、あの蝉は苦手なんですよ。毎夏、あの蝉が鳴き出す時、いつも私は不幸なんです。変な言い方だけれど。――去年は、六月一日の応召。そして佐世保海兵団、御存じでしょう、十分隊。そこにいて、毎日いやな思いで苦労して、この先どうなることかと暗い思いをしているとき、食事当番で烹炊所の前に整列していると、その年初めてのつくつく法師がそばの木に取りついて、いやな声立てて鳴きましたよ。丁度、サイパンが陥ちた直後で、どうせ私達は南方の玉砕部隊だと、班長たちから言われていた時で――」