Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
夜が更け、客は彼一人である。主人が店仕舞をしたがっているのは、その動作や表情で判った。だから彼も急いで食べ終ろうとするのだが、食べても食べてもソバは減らない。かえって殖えて来る傾きがあった。彼はついにあきらめて、店を出た。寒い夜だ。子飼橋にさしかかった時、左手の方遠くに、赤い火が見えた。阿蘇が爆発していることを、彼は新聞で知っていた。彼は立ちどまる。闇の彼方の彼方に、二分間置きに、パッと火花が上る。小さな火柱と、落下する火の点々が見える。そして闇が戻って来る。また二分経つと、音もなく火柱が立ち、点になって散る。彼は三十分ほど、爆発の繰り返しを眺めていた。悲しみはそれでも去らなかった。その気分は覚えているが、今五郎はその根源を忘れている。
「今日、子飼橋から、阿蘇が見えたよ」
五郎は低い声で言った。
「空気は澄んでいたし、雲もなかった。山の形も白い煙もはっきり見えた」
「よか天気でしたなあ。今日は」
女は五郎の体を表にした。腹這いからあおむけになったので、彼は女の顔や手の動きが見える。鼻の孔の形や色が、妙になまなましく感じられた。こんな角度から女の鼻孔を見るのは、初めてだったので、彼は眼をそらした。