Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ぬまふじん

沼夫人

泉 鏡花

Lee 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 39.541 caracteres · 78 pantallas

Aozora Bunko

ここには葉ばかりでなく、後れ咲か、返り花が、月に咲いたる風情を見よ、と紫の霧を吐いて、杜若が二三輪、ぱっと花弁を向けた。その山の端に月が出た。

「今夜は私が、」

すっと跨ぐ、色が、紫に奪われて、杜若に裙が消えたが、花から抜ける捌いた裳が、橋の向うで納まると、直ぐに此方へ向替えて、

「手を引いて上げましょう。」

嫋娜に出されたので、ついその、伸せば達く、手を取られる。その手が消えたそうに我を忘れて、可懐い薫に包まれた。

まだ耳の底に絶えなかった、あの、きょ、きょら、くらら鳥の声が、この時急に変った。野太く、図抜けた、ぼやっとした、のろまな、しかも悪く底響きのするのに変って、

……おのれら! おのれら!……

と鳴く。

ぎょっとして、仰いで見る、月影に、森なす大芭蕉の葉の、沼の上へ擢んでたのが、峰から伸出いて覗くかと、頭に高う、さながら馬の鬣のごとく、譬えば長髪を乱した体の、ばさとある附元は、どうやら痩こけた蒼黒い、尖った頤らしくもある。

あれあれ裂けた処が、そっくり口で、

……おのれら!……

とまた鳴いた。その体は……薄汚れた青竹の太杖を突いて、破目の目立つ、蒼黒い道服を着に及んで、丈高う跳ばって、天上から瞰下しながら、ひしゃげた腹から野良声を振絞って、道教うる仙人のように見えた。