Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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むめいさっかのにっき

無名作家の日記

菊池 寛

Lee 無名作家の日記 (むめいさっかのにっき) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 21.441 caracteres · 43 pantallas

Aozora Bunko

東京にいる頃は、山野や桑田や杉野などに対する競争心から、俺でも十分な自信があるような顔をしていた。が、今すべての成心を去って、公平に自分自身を考えると、俺は創作家として、なんらの素質も持っていないように思われる。

俺は、文学に志す青年が、ややもすれば犯しやすい天分の誤算を、やったのではあるまいかと、心配をしている。このことを考えると嫌になるが、青年時代に文学に対する熱烈な志望を語り合い、文壇に対する野心に燃えていた男が、いつが来ても、世に現れないことほど、淋しいことはない。俺も彼らの一人ではあるまいかと思う。人生の他の方面に志す人は、少しぐらいは自分の天分を誤算しても、どうにかごまかしがつくものだ。金の力、あるいは血縁の力などが、天分の欠陥もある程度まで補ってくれる。が、芸術に志す者にとって、天分の誤算は致命的の失策だ。ここでは、天分の欠陥を補う、なんらの資料も存在していないのだ。黄金だと思っていた自分の素質が日を経るに従って、銅や鉛であったことに気がつくと、もうおしまいだ。天分の誤算は、やがて一生の違算となって、一度しか暮されない人生を、まざまざと棒に振ってしまうのだ。