Clásicos japoneses con furigana
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むめいさっかのにっき
無名作家の日記
菊池 寛
Lee 無名作家の日記 (むめいさっかのにっき) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 21.441 caracteres · 43 pantallas
九月十三日。
とうとう京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない。が、どう思われたって構うものか。俺はなるべく、彼らのことを考えないようにするのだ。
今日初めて、文科の研究室を見た。思いのほかにいい本がある。蚕が桑の葉を貪るように、片端から読破してやるのだ。研究という点においては、決して東京の連中に負けはしないと、俺はあの研究室を見た時に、まったく心丈夫に思った。
その上に、俺は京都そのものが気に入った。ことに今日、大学の前を通っていると、清麗な水が淙々たる音を立てて、流れ下っている小溝に、白河の山から流れてきたらしい真赤な木の実が、いくつも流れ下っているのを見た。東京の街頭などでは、夢にも見られないような、その新鮮な情景が、俺の心を初秋の京都にひきつけてしまった。俺は京都が好きになった。京都へ来たことは決して後悔はしない。
が、俺はこの頃、つくづくある不安に襲われかけている。それはほかでもない。俺は将来作家としてたっていくに十分な天分があるかどうかという不安だ。少しの自惚も交えずに考えると、俺にはそんなものが、ちょっとありそうにも思われない。