Clásicos japoneses con furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Lee 篝火の女 (かがりびのおんな) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 27.727 caracteres · 56 pantallas
『はっ、では――』
目礼して、外郎売の男は、萩乃の体を横抱きにすると、魔風のように、何処かへ立ち去った。
その頃から何処となく、深夜の空気がさわがしかった。熊楠は、眼をかがやかせて、大地の音でもあるようなその気配を聞き澄ましていたが、愕然と起って、
『十介っ。魚住十介はおらんかっ』
十介は駈けて来て、槍と一緒に身を屈めた。
『なんだっ、あの遠い物声は』
『お味方です』
『味方?』
『されば、何者かが松井田の城を、相木勢にまかせておいては、百年経っても落ちるはずはないなどと申し触れる者があって、その為、御本陣氏政公からの御命で、里見義介、そのほかの手勢が、下後閑の間道から、急に、総攻めにかかったそうでございます』
『なに、この相木熊楠をさし措いて、総攻めにかかったと。ううむそうか……』
唇を噛んで、凝と、考えこんでいたが、突然、
『陣鉦、陣鉦っ。総がかりの鼓を打てや。夜の白むまでに、松井田の城は相木勢が乗り破った』
鎧を着こむと、
『十介、篝火を焚けっ、あるかぎりの篝火を焚けっ』
と、命じた。
十介は、それぞれの部将に、熊楠の命をつたえて駈けまわった。霹靂のように急なのである。