Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lee 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 183.656 caracteres · 363 pantallas

Aozora Bunko

歌によむ草枕、かりそめの旅とはいえど半月ひと月と居馴染めば、これもまた一種の別れである。涙もろい女客などは、朝夕親しんだ宿の女どもと云い知れぬ名残の惜しまれて、馬車の窓から幾たびか見返りつつ揺られて行くのもあった。

修禅寺に詣でると、二十七日より高祖忌執行の立札があった。宝物一覧を断わられたのも、これが為であるとうなずかれた。

転じて新井別邸の前、寄席のまえを過ぎて、見晴らし山というのに登った。半腹の茶店に休むと、今来た町の家々は眼の下につらなって、修禅寺の甍はさすがに一角をぬいて聳えていた。

この茶店には運動場があって、二十歳ばかりの束髪の娘がブランコに乗っていた。もちろん土地の人ではないらしい。山の頂上は俗に見晴らし富士と呼んで、富士を望むのによろしいと聞いたので、細い山路をたどってゆくと、裳にまつわる萩や芒がおどろに乱れて、露の多いのに堪えられなかった。登るにしたがって勾配がようやく険しく、駒下駄ではとかく滑ろうとするのを、剛情にふみこたえて、まずは頂上と思われるあたりまで登りつくと、なるほど富士は西の空にはっきりと見えた。秋天片雲無きの口にここへ来たのは没怪の幸いであった。