Clásicos japoneses con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas
「玉井はん、おいでやす」
女の方から、声をかけて来た。
「今日はあ」
と、仕方なく答えたが、金五郎には、なんのことやら、えたいが知れない。語調もぶっきらぼうで、怒ったようだった。
うすぎたない部屋の中に、いきなり、不似合な百合の花束を投げこんだようである。下ぶくれの丸顔で、眼元の涼しい女は、どこか打ち沈んだところがあって、おどおどしてさえいた。唇の右下にある大きな黒子が、女の顔に妖しい色気を附与している。金五郎は、たしか、この女の名は君香というのだったと、昨夜の記憶を呼びおこした。ベッドの枕元に、ボンネットと、緑色のパラソルと、黒い絹の手袋とが、置いてある。
「新公、どうかい?」
壊れた人形を修繕したみたいに、全身、繃帯でつつまれている森新之助は、絆創膏だらけの顔を、苦しそうに、友達の方に向けた。
「殺されたかと、思うたよ」
「コレラより、よっぽど、人間の方が恐しいのう」
「ほんとに、すみまへん」と、君香は、美しい顔に、消え入りたいような、陳謝の表情を浮かべて、
「なんというたらええか、わからしまへん。あて、なんにも知りへんのに、こんなことになってしもうて。