Clásicos japoneses con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lee 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 410.131 caracteres · 824 pantallas
署長にいうときなさい――玉井金五郎が違犯して、拘引しようとしても、いうことを聞かんじゃった。……ちゅうて。……さあ、勝則、こんな判らず屋を相手にしとっても、仕様がない。帰ろう。漕げ」
小伝馬船が、勝則の櫓で、港口に向かって動きだすと、水上署のモーター・ボートも、爆音を立てて走り去った。そっと運転手が巡査の袖を引いたのである。運転手はよく金五郎の名を知っていたらしい。速力が段ちがいなので、同じ方向なのに、ボートは、月光の中に、白い煙と白い波とを残して、見る間に、中ノ島の横を湾内へ吸われて消えた。水上警察署は若戸渡船場とならんで、港口にある。
親子は、しばらく無言であったので、櫓臍の音ばかりが、キイキイと、静かな春夜の海のうえに流れた。夜光虫も港口へ近づくにつれて、光がうすらぐ。火の消えたことのない八幡製鉄所の熔鉱炉が、相かわらず、呼吸をするように、天を赤く染めている。
「おれは、駄目じゃなあ」
魚籠に入らぬ大スズキを縄でくくり、破れた網を巻きおさめながら、金五郎が、自嘲する語調で呟いた。
「どうしました?」
「なんで、あんな馬鹿なことをいうたとか知らん? あんまり、巡査が威張りくさるもんじゃけ、つい、いつもの癖が出てしもうたが、……どうも、後口が悪いなあ。