Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lee 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 119.879 caracteres · 242 pantallas
そう言い乍ら思いがけない強い力で私の手首を握るので、その突瑳に私ははや明日の負担にフラフラし乍ら、長い廊下を消え去るように歩きはじめるのであった。すると看護人に伴なわれた辰夫は別な廊下へ――そこには鉄の扉が三ヶ所にも鎖されているが、まるで私をも幽閉する音のように鋭い金属の響を放ち、彼等の去り行く跫音と共に次々に開閉される憂鬱な響が地獄のような遠方から聞えてくる。矢張り明日も来なければならないと、悲痛な思いで決意を強いられる次第であった。
ところが此の病院では私の心掛けが殊勝だというのであろうか、三十分に規定された面会時間を一時間に――ああ延長してくれた。この恩典の手前としても私は今日は齲歯が痛むからという言訳で五十五分に切上げる分別さえ出来ないのであった。マラルメは頽廃派だから歯が痛むと唄っているが、私は齲歯を痛めてもならない。斯うして日毎に私達は一時間に零す語数が無に近い程減少して、私達の肉体も無になるのではないかと疑わねばならなかった。
併し私は病院のほかに辰夫の家庭へも足繁く通わねばならなかった。つまり早く退院の手続をとるように願うのが第一で、百円の金が急の間に合わなければ、差当ってチーズやバタの類い――というのが、辰夫の家では父の没後小さな食料品店を開いていたので、そういう物を届けるように依頼する