Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Lee 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.271 caracteres · 263 pantallas

Aozora Bunko

彼が獰猛野獣の如きは其人境遇の罪で、其人自身の罪では無かった。

そんな理屈までは思い及ばぬにしても、お葉は気の強いと共に涙脆い女であった。種々考えると、最初は唯憎いと思っていた重太郎其人も、今は漸々に可哀そうにもなって来た。先刻からの様子を見ると、彼は飽までも無邪気である。彼は極めて明白に、正直に、自己の詐りなき恋を語っているのである。

形は人か猿か判らぬような青年ではあるが、彼の恋は深山の清水の如く、一点人間の塵を交えぬ清いものであった。お葉も其の誠には動かされた。が、此の返事は何となろう。

「お前さん、堪忍してお呉れよ。」

お葉は重太郎の手を把って泣いた。

「じゃア、嫁になって呉れるかい。」

「それが不可いから謝るんだよ。妾は何うしてもお前さんのお嫁にゃアなれないんだから……。」

重太郎は黙って眼を晃らせた。

「だから、堪忍してお呉れと云うんだよ。」と、お葉は賺すように重ねて云った。

「何、何故だ。」と、重太郎は息を喘ませて詰寄った。

何故と聞かれると返事に困るが、お葉も重太郎と同じように片思いの恋が有る。重太郎の片思いが哀れであると共に、お葉の片思いも哀れであった。