Clásicos japoneses con furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lee 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.271 caracteres · 263 pantallas
飛騨山中の寒い朝、哀れは同じ片思いの男と女は、温かい涙を形見の花に灑いで別れた。
重太郎は潔よくお葉を思い切ったのであろうか。彼はお葉から受取った椿の枝を大事に抱えて、虎ヶ窟の方へ悄々と引返した。
昨夜彼がと共に山を降って、七兵衛と闘い、安行を奪ったのは、市郎に対する恋の恨と母の恨とであった。が、そんなことは既う忘れて了ったらしい。重太郎は唯この形見の枝を保護することにのみ屈託して、夢のように岩石の間を辿った。
窟の前に来ると、母の姿が見えぬ。少しく怪んで内を覗いたが、奥にもお杉の姿は見えなかった。
「阿母さん、阿母さん。」
彼は続けて呼んだ。この途端に窟の奥から一人の見馴れぬ男が飛んで出た。これは前に記した通り、市郎の使を頼まれて、穴の底から登って来た坑夫体の男である。
二人は恰も入口で礑と出逢った。
「誰だい、お前は……。」
重太郎は眼に角立てて詰ったが、男は急いているのであろう、返事もせずに駈け出した。窟には母の姿が見えず、加之も怪しい男が出て来たのであるから、重太郎の不審は愈よ晴れぬ。先ず飛び蒐って男の腰に組付いた。
「お前は誰だ。」
「誰でも可いよ。