Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Lee 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.271 caracteres · 263 pantallas

Aozora Bunko

彼は熊吉の屍体を抱き上げて、咬殺した如くに其の疵口を咬んだ。が、猶不安に思われるので、更に洋刃を以て其の顔の皮を剥ぎ取った。衣服も剥いで赤裸にして了った。斯うして置けば手懸も付くまいと、今度は其死骸を引抱えて行って、一町ばかり先の小川の畔へ捨てて来た。

この時、村の方から松明の火が近いて、大勢の人声や跫音が乱れて聞えたので、脛に疵持つ彼は狼狽えて逃げた。而も人里の方へ逃げるのは危険だと悟ったので、彼は案内知ったる山の方へ逃げ込んだ。雨はますます降って来たので、彼は唯ある大きな岩蔭に隠れて、眠るとも無しに一夜を明かした。夜が明けると、雨は止んだ。けれども、麓では昨夜の殺人事件の詮議が厳しかろうと推察されるので、彼は直ちに山を降るほどの勇気は無かった。今日一日は山中に潜伏して、日の暮るるを待って里へ出る方が安全であろうと、飢い腹を抱えて当途も無しに彷徨う中に、彼は大なる谷川の畔に出た。

瞰上れば我が頭の上には、高さ幾丈の絶壁が峭立っていて、そこは彼の虎ヶ窟なることを思い当った。若い男と女とが社会の煩さい圧迫を脱れて、自由なる恋を楽んだ故蹟である。

「俺もあの時は若かったな。