Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 261.216 caracteres · 521 pantallas
しかし、もう二人は、剣山の裾まで来てしまった。苦難、迫害、ふりかえってみても、お綱には、なお短かった心地がする。
明日は明暗の雲をわけて、間者牢に初めての父の顔を見る! それも待たれてやまぬものだ、今でも、想像の父の顔が、眼の前にチラつくほどである。どういおう! なんと名乗ろう! 千々に乱れて涙ばかりを見あわすであろう! そんな想像だけでも涙がわく。
と、かの女の乱れた胸に、微笑をそそるような空想がかすめた。
「死ぬという方法があるじゃないか。剣山へ行きついた後に、弦之丞様とふたりで死ぬのが、すべての幸福をもちつづける一番いい道じゃないか。死出の旅は長い! 剣山へ来たよりは遠い! そして静かで果てというものがない」
父に会った歓びの絶頂に、弦之丞とともに手をとって死のう。
そう思うそばから、また、一方の心は、
(お千絵を不幸に墜してもよいのか!)
と責める声がする。
剣山に行きついて、剣山の土になるのは、いわゆる、木乃伊とりの木乃伊になるの類で、弦之丞がここまでの苦艱も、結果は、無意味なものに帰してしまう。
ふたたび重囲の阿波を逃れ出なければならない。