Classiques japonais avec furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Lisez いやな感じ (いやなかんじ) de 高見 順 (たかみじゅん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 292 113 caractères · 587 écrans
金の無いときは無いんだから、しようがないんだ。
金がほしいと思わないときは、俺には金が無いのだ。今の俺がほしいものは、金じゃない。だから、俺には金が無い。――
火のはいった小さなコンロを女中が運んできた。つづいて、ズー鍋を持ってきて、コンロの上にのせた。
「酒を早く、くんな」
と砂馬が言った。
「はい、はい」
子供みたいな山出しの女中が、一生懸命働いている。鍋のなまずは、まだピクピク動いていた。つい今し方まで、生簀のなかで生きていたなまずが、マナイタの上でぶった切られて、小さく刻まれて、その火の上にかけられている。
血のついたそのなまずのひと切れを、俺は箸でつまんで自分の鼻さきに持って行った。
「なにしてんだ」
砂馬があきれて、
「この店は、あがったなまずなんか、使っちゃいねえよ」
俺は黙って、なまずを鍋に返してからニヤリと笑って、つぶやきの低さで、
「血のにおいに飢えてるんだな」
砂馬は眉間にしわを寄せて、いやな顔をしたが、
「分るよ」
と言った。
なに言ってやがると、俺は思った。
そう思うんなら、この砂馬などに会わなきゃいいのに、俺は寂しかったのだ。気持が凶暴になってるくせに、あるいはそのために、寂しくてしようがない。