Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Lisez ばちあたり de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 391 caractères · 44 écrans
うちには半月ほどいたであろうか、私たちきょうだいとは殆んど没交渉で、いっしょに食事をした記憶もないし、中川という姓だけは覚えているが、名前も知らないくらいだった。
弁護士をしていた父は、そのころがもっとも全盛だったのだろう、東京の事務所にいるときでも、たまにしか私たちと顔の合うときはなかったうえに、絶えず長い出張をしていた。中川が寄宿していた期間、父が麹町の家にいたか、それとも出張した留守のことであるかはよくわからない。――五番町にあった家はあまり広くはなかったが、二階に三間、階下に五間あり、中川は階下の南の端にある四帖半を使っていた。その彼が或る朝早く、二階からおりて来たのだ。もう校服を着ていたが、帽子はかぶらず、手ぶらで、ゆっくりと階段をおりて来た。
私はなんの理由もなくどきっとした。
そのときの感じを云いあらわすことはできない。もちろん、二階に寝ている母のことなど考えてもみなかったし、中川のそぶりに変ったところがあったのでもない。中川は平静そのもので、廊下にいる私を見ると、いつものとおりぶあいそに「よう」と云っただけであった。しかも私はどきっとしたのだ、そんな感じは初めて経験したことであるが、十歳の子供の頭では解釈のしようもないし、すぐに忘れてしまった。