Classiques japonais avec furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lisez みなかみ紀行 (みなかみきこう) de 若山 牧水 (わかやまぼくすい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 102 087 caractères · 203 écrans
或る処では真正面に富士の聳え立って居る松の蔭で見た。或る処では伊豆駿河の平野に続いて同じ様な重いみどりの色に煙っている海面を見下しながら、脚に這い上る山蟻を払い払い深い若葉の蔭で見た。次第に登って道ばたに樹木の絶えた草山の原を登る処に来ると、帽子をぬぎ、肌をも抜いであらわに日の光に照らされながら、やわらかな芒の茂みの中で見た。そして、肩を並べながら、此処が面白くない、この句を斯うしたらいいだろうと、一々ペンでノートに書き入れて行ったのであったが、部屋の中で向き合って見る時よりも遥かに身が入って、私自身にも面白かった。また、この人の熱心はいつとなくその作の上に今迄にない進歩を見せているのであった。
片登り四里の傾斜を登りつくして、峠の青草原から真下に蘆の湖を見下した時は、流石にいい心持であった。この前私独りで矢張りこの旧道を登って此処から見下した時はあたりの草も湖辺の樹木も悉く落葉しつくした冬であった。その時はいかにもこの山の間の湖が寂しい荒れたものに眺められた。今日見るのはすっかりその時と趣きを変えて、水の色も柔かく、ことに向う岸の権現の社からかけて大きな森林に萌え立った若葉の渦巻の晴々しさ、その手前に聳えた島の上の離宮の輪奐の輝やかさ、すべてみな明るい眺めに満ちていた。