Classiques japonais avec furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lisez みなかみ紀行 (みなかみきこう) de 若山 牧水 (わかやまぼくすい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 102 087 caractères · 203 écrans
「ねエ爺さん、お前さんはどうしてもあの山に登るのはいやかね、ほんとにそんなに危険なのだろうかナ」
老爺も私の微笑を感ずる様に矢張り向うを見たままに薄笑いして、
「登れねエことはねエだが、何しろもう永いこと登って見ねエだからなア、路がどうなってるだかサ」
「上高地の宿屋で今夜詳しい事を訊けばいいじゃアないか、大体の事はお前よく知ってるわけなんだから、路だってそう大した変りはないだろうよ」
私は持病の胃腸によくきくというので遥々駿河からこの信州の白骨温泉というへやって来て三週間ほど湯治していた。島々郵便局所在地から八里もあるという全く世の中と隔離した山奥の温泉場であった。乗鞍岳の北麓に当り、海抜四千八百尺、温泉宿の裏山に登ると殆んど相向いにこの火山と対することが出来た。そしてどうかして一度その煙の傍まで登って行きたくてたまらず、頻りに機会を窺ったが不幸にもその滞在中殆んど雨ばかりが続いて、よく完全に朝から晴れたという日がなかった。漸くその天候の定まりかけた頃になると私は其処を立たねばならぬ日取に当っていた。それも初め入って来た松本市へ出て行く道を帰るが惜しく、白骨から上高地温泉へ出、其処から飛騨へ越して平湯温泉というへ廻り、更に飛騨の都高山町へ出て遠く越中路へ歩き、富山市から汽車で駿河へ帰ろうと定めたのであった