Classiques japonais avec furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Lisez 上海 (しゃんはい) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 628 caractères · 292 écrans
それが楽しみで、実はここへ来るんだが、あの女の本心だけは流石の俺にも分らんね。」
山口はゆっくり首をめぐらせて、外人たちから芳秋蘭のいるテーブルの方へ向き返った。すると、「おッ」と彼はいって背を起すと、うろたえたように周囲をくるくる見廻しながら甲谷にいった。
「どこへ行った。芳秋蘭?」
甲谷はそれには返事も返さず黙って立ち上ると、山口を捨てていきなり表へ飛び出した。芳秋蘭の黄色な帽子の宝石が、街燈にきらめきながら車の上を揺れていった。甲谷は黄包車を呼びとめると、すぐ帽子も冠らず彼女の後から追っていった。彼は車の上で上半身を前に延ばし、もっと走れ、もっと走れ、といいながら、頭の中では芳秋蘭を追いもせず、しきりにだんだん遠ざかっていく宮子の幻影を追っているのであった。
――あの女は、あれは素敵だ。あれが俺の嫁になれば、もう世の中は締めたものだ。
ブリッジ形の秋蘭の鼻は、ときどき左右の店頭に向きながら、街路樹の葉蔭の間を貫いて辷った。唾を吐いている乞食や、鋪道の上で銅貨を叩いている車夫や口の周囲を光らせながら料亭から出て来た客や、煙管を喰えて人の顔を見ている売卜者やらが、通りすぎる秋蘭の顔を振り返って眺めていた。